“猫15匹、犬5匹の家” [廣瀬慶二] 1/2

 The Cats' Houseは、私にとって特別な思い入れのある「住宅作品」です。 世界でも類を見ない密度で様々なアイデアを詰め込めるだけ詰め込んだ、 猫への愛情に満ちあふれたこの家が実現できたのは、 私の能力というよりは、施主であるH家の皆様の、猫に対する愛情と、 私の設計に対する全面的な信頼があったからに他なりません。 その信頼や期待に私が100%応えられたかどうかは、まだ竣工して2ヶ月しか経っていないので、 今は何とも申し上げられないのですが、このサイトで紹介した「猫たちの姿」を見れば、 まずまずの成功といいますか、いい仕事が出来たと思っています。

 H家はご夫婦とお嬢様の3人家族で、設計当初は、猫が15匹、犬が5匹居ました。 設計中の2008年11月に猫の[ろん]が病気で亡くなり、 ご家族の悲しみは非常に大きかったのですが、 なんとか気丈に奥様は新居設計の打ち合わせに参加してくださいました。 設計が一応の完成をみたのが2009年1月。 現状のカタチにまで洗練するための加筆・修正が終わったのは2009年4月でした。
 その後、解体工事や仮住まいへの引っ越しがなされ、 そこで新しい仲間[かい]と[まる]が加わり、 最終的に猫16匹、犬5匹になって、 2009年8月にようやく完成したのが、この「The Cats' House」です。 標題が「猫15匹、犬5匹の家」となっているのはそんな経緯からです。 最初に設計のご依頼を受けたのが2008年2月ですから、 木造2階建ての住宅にしては結構な時間を費やした一大プロジェクトでした。
 あまりにも常識からかけ離れた「猫専用」の部分のほとんどを「建物」として造ることから、 意思疎通用に作成したパースは30枚以上。設計図は、施工図を除いた状態で90枚。 40坪台の単純な木造軸組在来工法の家としては異例の図面量です。
 その甲斐もあり、現場監督さんと大工さんは完ぺきに「猫のため」というコンセプトを理解して工事を進めて下さり、 私がこの現場でとても印象に残っているのは、引っ越し後に見学に来られた大工さんが、 自分が造った空間で猫たちが幸せそうに動き回る様子を、目を細めて見ていらっしゃる姿でした。
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廣瀬慶二 ドミニック・ヤング 樋口ヒロユキ BLOG